Diary & Novels for over 18 y.o. presented by Reica OOGASUMI.
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      最終更新21th Sep.2021→「Balsamic Moon」全面改装
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※作中のあらゆる人物は覆霞レイカによる妄想です。




 最高気温が十℃にしかならなかった六月の雨の日。

 土方が、同じく刑事課の山崎に担がれて医務室にやってきた。

 俺は、死んだ土方の親父の従兄弟で、ずいぶん可愛がって貰っていたこともあり、こいつがガキの頃から、あちこちに傷を作ってくるのを診ていた。バラガキの時分は顔や頭をひっかくわ転んでたん瘤を作るわ、小学生になってからは風邪と肺炎、中学生以降は剣道由来のミミズバレ。大して丈夫でも無く、おまけに誰もが目を瞠るほどの美少女顔のくせに喧嘩っぱやくて、いつも付き添ってきた姉の蘭ちゃんを、こちらが気の毒に思うぐらいだった。

 そいつが刑事(デカ)になると言って来た時は、それだけはヤメロ、と言ったが、幼馴染の近藤もいることだし、飽きたら辞めるだろう、と思っていた。が、辞めるどころか、管内の治安を向上させるわ警官同士の剣道大会で上位に食い込むわで、地域への貢献には大いに役立っているらしい。

 そのガキはいま、爆弾を抱えている。正確に言やぁ地雷だが。

 その所為で煙草の本数が増えた。で、体を弱くしやがって、雨が降るたびに熱を出していた。ガキの時分みたいに。

 半分は俺が原因かもしれねぇが、まぁ、実際手を出したのは、こいつだし。

 悪い事をしたとは思っていたのだ。鬼刑事と呼ばれながらも、なんだかんだと面倒事を背負い込み、一人で悩む癖があるのは分かっちゃいた。尤も、いまは自滅しそうになっている。

 そいつを背負ってきた山崎が哀れすぎて、だから助けてやることにした。

 俺は名医だよ、全く。
autor 覆霞レイカ2014.02.25 Tuesday[01:08]
 
 沁みついたニコチンの匂いで目が覚めた。髪やシーツだけでなく、室内全体が燻っている気さえする。

 家の中では吸わないようにしていた筈が、既に一日で一箱を超えるようになっていた。

 もともと煙草は好きじゃない。体力が落ちて剣道に支障が出るからだ。ガキの頃から筋肉のつきにくい体質の俺は、とにかく鍛えるしかなかった。学生までは鍛える時間が十分にあったから余裕があったが、刑事になってからと言うもの、自ら時間を見つけて鍛える努力をするしかなかった。が、段々とベルトの穴が足りなくなってきて、正直、焦っている。

 細かく震える己の指が恨めしい。

 左手に出来た剣道マメさえなければ、血管の浮いた頼りない、女のような手。これをみるたびに、かけられた呪いに己のすべてが食い尽くされる錯覚に陥り、それを振り払うかのように毎朝布団を跳ね飛ばして起きていたのだが、今朝はなかなかベッドから起き上がる気にならなかった。

 雨である。

 昨夜から降り続くそれが音も無く窓を伝って壁を落ち、あいつの涙のようだったから。

 少し前に俺が犯人ともみ合って潜伏先だったアパートの階段から転げ落ち、全身を強かに打ち付けたと聞いた時、あいつは真っ青になってエプロン姿のまま店を飛び出したと言う。

 目を覚ました俺がみたのは、ベッドのすぐ脇で、両目から大粒の涙を零しながら俺の手を必死に掴むあいつだった。

 ―――――その時思ったのだ、俺を失ったらこいつは、二度と立ち直れないだろうと。

 俺には、それだけあいつに愛されている自信があった。冥府の男には届かないとしても、生者のなかでは自分が一番その位置にいると思っていた。それだけ俺も、あいつを愛していた。

 同時にそれは、彼女よりも先に俺が死ぬことは出来ない事を意味した。いつでも殉職する可能性がつきまとう刑事の俺は、それを自分に、そしてあいつに誓う勇気が無かった。警察官と言う自分と、男としての自分。どちらを選ぶと問われて俺は、答えが出せないで居た。

 そんな自分に嫌気がさして言葉を失いそうになると俺は、為すすべも無くあいつを貪った。あいつも俺を貪った。互いの体で知らないことは無かった。

 そうして俺たちは、出会ってから三回目の夏を迎えようとしていた。
autor 覆霞レイカ2014.02.25 Tuesday[01:07]
 私は、彼が好きだった。ふと言葉が途切れた時に、長い睫を伏せて、ともすれば沈黙のなかに沈んでいく彼の深い二重瞼と形の良い唇を眺めるのが好きだった。力強い腕のなかに引きずり込まれ、彼の沈黙に混じり合うのが、好きだった。

 もうすぐ冬が訪れようとする季節の午後。

 窓から差し込む日の光が暖かくて、穏やかな時間に、私はそっと瞼を閉じていた。
autor 覆霞レイカ2014.02.21 Friday[01:28]
 国民の皆さん、こんばんは。日本一かわいくて強い刑事、日野警察署巡査部長の沖田総司です。

 毎日、日野市民の平和の為に市内を駆けまわったり、鬼上司に甚振られたりどつかれたりしていますが、今夜は飲み会です。僕にだって、飲みたくなる時があるのです。

「何やってんだよ、沖田」

「あ、斎藤さん、電話終わりましたか。今のは挨拶の練習です」

「挨拶ぅ?電話は終わった。もう着いたとさ」

「じゃぁ始めようぜ腹減った」

 永倉さんが、恨めしそうに目の前の生ビールがたっぷり注がれたジョッキを見つめている。僕もおなか空いた。じゃ、せーの、
autor 覆霞レイカ2014.02.13 Thursday[17:17]
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