Diary & Novels for over 18 y.o. presented by Reica OOGASUMI.
Sorry,this blog is Japanese only.
最終更新21th Sep.2021→「Balsamic Moon」全面改装 土方さんと一緒に暮らし始めて一週間が過ぎようとしている。二十四時間営業のスーパーが目の前にあるこのマンションは署に近く、仕事の鬼である土方さんがふらふらになって夜八時過ぎに帰宅しても、少し前に俺が帰宅していれば彼に温かい食事を出せる。そう言うわけで、俺は帰宅の前に、出していたクリーニングを引き取りがてらスーパーに寄って、買い物をするのが習慣になっていた。
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※※ 18歳未満の人は、絶対に読んではいけません ※※ __________________________ BGM "You Give Love a Bad Name" Bon Jovi けぶるような霧雨の夜、が俺たちの約束だった―――――― ―――――― Foggy Rain ―――――― 初めてあいつを抱いたのは、二十九歳の秋。 一歳違いの幼馴染で、ガキの頃から互いに知らないことは無かった。幼稚園も小学も中学も高校も一緒で、朝も夜も隣にいることが当たり前だと思っていた。 降り出した雨は夜半を過ぎても止む気配が無く、マンション七階のこの部屋の、カーテンを閉めた窓越しに、その冷たさと湿度を未だ熱の下がらない俺の躯に染み通らせてきた。遠くから雷鳴が聞こえる。
気温が下がるたび、きしむように骨が痛む。 俺は、辛うじて動く体を駆使して、クローゼットの奥から毛布を取り出し、ベッドの上で被っていた。 点滴の刑三時間コースが終了した後、俺は医師の松本が呼んだタクシーに突っ込まれ、愛車のアクセラハイブリッドを駐車場に置いたまま自宅に戻って来た。熱が下がったら復帰、との署長様の有難いお達しで、恐らく今日は病欠だろう。無理やり出勤すれば松本がやって来て、再び点滴の刑になり、鎮静剤も打たれることになる。俺は鎮静剤が嫌いだった。筋肉が麻痺するのは気色悪いとしか良いようが無い。だから大人しく、寝ることにした。 (……怠(だり)ぃ) 深夜のマンションはやけに静かで、人の気配と言うものを感じさせない。日野署を見下ろす小高い丘の上にあるここはほぼ単身用で、出勤帰宅以外での人の出入りが少なく、俺のような独身の公務員が多かった。丘の傾斜に入る前にあるスーパーで念の為食料品を買ってきたが、食欲が湧かず、俺が開けたのはペットボトルのミネラルウォーターだけだった。…こんなことを繰り返しているから、痩せて来たのだ。 学生時代はもっと筋肉があった。体が若かっただけでなく、体のリズムが保たれていた。が、刑事になってからと言うもの、生体の時間と仕事の時間とが完全な不一致を来している。煙草を吸うようになってから不眠気味の体質になり、為兄に頼んで不眠対策の精油を作って貰ってもしっかり眠ることが出来なくなっていた。常に睡眠不足の重怠い体に鞭打って、痩せた筋肉で無理矢理歩く感覚に苛まれて半年近く。休んでも休んでも、変わらなかった。 長兄で閑山(かんざん)の為兄の香水は、爽やかで深みがあることで知られていた。香水の世界は俺には良く分からないが、「魂に浸透するような」や「深層の極み」などと称されている。確かに、その辺で売られている香水とは香りの質が全然違った。彼は香水だけでなく、精油や石鹸も扱い、一部は治療用としても用いられ世界中で人気を得ていた。 その為兄の精油のうち抗炎症作用のあるものを体に塗りたくっているのに、熱は一向に下がらなかった。つまりこれは、見かけは風邪だが、中身は肉体の疾患から来る熱ではない、と言うことだ。 ―――――もう打つ手が無いことは、誰よりも俺が一番分かっていた。
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