Diary & Novels for over 18 y.o. presented by Reica OOGASUMI.
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      最終更新21th Sep.2021→「Balsamic Moon」全面改装

 俺はすっかり熱が引けた。

まだ眠っている木戸さんの肩にきちんと布団をかけて、ベッドを出て、うーんと伸びた。

 今日は金曜日。さっさと仕事を終らせて、食事にでも行きたい気分だ。俺が病み上がりなのを気にした木戸さんが、俺に食事は作らせてはくれないだろうから。

 振り返って俺は木戸さんをみた。

「………」

 表情も穏やかだし、風邪のぶりかえしもなさそうだ。よかった、と安心する。

「……………」

 TVでみる木戸さんは凛々しい。けれどベッドでぐっすり休んでいる木戸さんはあどけない顔をしていて、このまま閉じ込めたい気分になる。議論の得意な彼が凛々しいのはもちろんだが、実はこちらから話し掛けない限り結構無口で、自分でじぃっと考え込むひとであることは、あまり知られていない。なにせ木戸さんは日本のアイドルだから周りが放っておかないのだ。写真集まで出るなんて、まったく俺の木戸さんなのに…

 …といいつつ、俺ももっていたりするのだが(しかも木戸さんに頼んで表紙に直筆サインを書いてもらった激レア品)。

『私の写真なんかみて楽しいのか?』

『とても楽しいです。ほかのひともきっと同じ気持ちです。』

『…楽しい気分になるのなら、構わないのだが……なにも剣道場まで隠し撮りされなくてもいいじゃないか…』

『確かにプライバシーに触れることですが、貴方の寝顔は私が守りますから』

『…ばかっ』

 思い出して俺は肩を震わせて笑った。ベッドの上が動く気配がして振り返ると、木戸さんが

「う……ん…」

 と寝返りをうつところだった。

 俺は足音を忍ばせてそっと枕もとに近づく。

 この寝顔は俺が守りますから。

「……」

 木戸さんを起こさないよう俺は上体を折り曲げてまだ眠る彼の額に口付けた。
autor 覆霞レイカ2014.02.13 Thursday[16:35]
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