Diary & Novels for over 18 y.o. presented by Reica OOGASUMI.
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最終更新21th Sep.2021→「Balsamic Moon」全面改装 「しまった作りすぎた……」 西日の差し込む台所で私は唖然とした。今日は早く仕事が終わり、大久保が戻っていなかったから私が夕食を作ろうと、あたふたと立ち回っていたのだが、調子に乗ってラジオを聞きながら材料を切ったり炒めたりしていたら、予想以上に具が多くなってしまったのだ。いくらラジオの内容が「昨今の政治界と政治家」だったとは言え。 「これは…流石に大久保も食べきれないだろう…」 かといってタッパに詰めて冷凍保存するのは、どうも好きになれないのだ。これは液体じゃないか。 「いや、そんなことはどうでもいい」 私はふる…と頭を振って目の前のこんもりとした鍋をみつめてなんとかしようと考えた。が、味見をしてみると具が多かったせいか、いつもよりも美味しく感じる。 「こういうところで私が具を減らしても、きっと美味しくなくなってしまうのだろうな…」 味加減は大久保が得意とするところなのだ。私ではない。 「はぁ………」 早速嫌な予感が私の頭を過ぎった。 前にも、二人ぶんにしては妙に多く作ってしまったことがあるから。 そのときの大久保は、困るどころかニヤリと笑ってこう言ったのだ。 貴方の私に対する愛情の大きさは、よく分かりました。 そのあとは、お約束で。 「……」 私は片手で顔を覆った。 今夜はなにを言ってくるんだろう。 想像しながら、私は鍋から掬い上げたジャガイモのかけらを口に含んで、あのとき口移しで大久保が私に食べさせたことを思い出し、 一見ふざけた彼のもつ真摯な瞳を思い出して、赤面した。
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