木戸さんの日常というものは、ひところの政治家に比べかなり地味なものである。地道といったほうが相応しい表現かもしれない。見た目華やかなだけに意外に思われているらしいが、自分が華やかなので、わざわざ着飾る必要がないのだった。
 接待も減った分、花街は衰えたが、政治活動に宛がう精神的時間も増えたと在って、神経の細かい彼にとってはいまのほうがやりやすかろうと、古い政治家は皮肉交じりに言ってくる。言わせておけばいい。
「大久保さんよ、あんたあんひとを使って何がしたい?」
 俺は彼を使うつもりはない。むしろ俺が自分の出来ることをしたいのだ。彼にとって穏やかな日常を営んでいたいのだ。それが彼の妨げになっていないのなら、彼が喜んでくれるなら、それでいいじゃないか。
「…大久保?」
「……ああ、すみません」
「大丈夫か?」
「大丈夫です」
「ならいいんだ」
 言って彼は俺の乾いたシャツを手に取った。そして彼がアイロンをかけて俺がたたむ。
 そうだ、俺が彼と共有したいのは、なにか特別なものではなく、ごくありふれた時間なのだから。





0時を過ぎました→K「く…あぁ…」、O「木戸さんっ…」
1時を過ぎました→O「おやすみなさい」、K「おやすみ……」
午前2時過ぎです→K「(掛け布団を口のほうにもっていく寝相になる)」、O「…(気配に目を覚ます)………むぞか…(と抱き締める)」、K「ん…」
午前3時です→K「(寝言で)大久保…」、O「(目が覚めると同時にニヤリ)」
4時過ぎです→ふたりは熟眠中です
5時を過ぎました→知らぬ間に抱きあっています
6時を過ぎました→O「(こんな格好でいたとは木戸さんも大胆だ)…おはようございます」、K「…(ぽや〜んとした顔で)おはよう」
7時を過ぎています→K「私は今日は午後からだから」、O「では私は早く戻ります」
8時を過ぎました→O「(歯を磨いている)」、K「(皿を磨いている)」
9時を過ぎました→O「行ってきます(と玄関で××)」、K「ん…(頬を染めて)気をつけて…」
10時です→O「(会議中。気分がいいため進行が早い)」、K「(鏡に写った自分の顔をみながら)あいつはいったい私から何度唇を奪えば気が済むのだろう?」
11時を過ぎました→K「(掃除をしている。塵ひとつ残さぬ見事なもので、だから木戸には家政婦は必要ないのだった)」
12時です→O「(調子がいいのか、昼飯を食べながら仕事をしている)」、K「(洗濯物を干している。皺、染みがひとつとしてない。無論シーツも)」
1時を過ぎました→K「(お車に乗り込む。昨日事務所までに届いたファンレターの一通一通に目を通す)」、O「木戸さんはちゃんと昼ご飯を食べただろうか?」(食べてません。心配的中!)
2時を過ぎました→Ito「社長、今日の会議は素晴らしかったのです」、Iwa「木戸さんがなんぞされたかの?」
3時を過ぎました→K「(仕事中、やや青褪めてふらつく。緊急放送がかかってテレビで速報が流れる)」、O「(ネットで速報をみたOLらの噂を耳にして)やはりな…」
4時を過ぎました→O「(今週のスケジュールを確認している)」
5時を過ぎました→O「今日はこれで帰る」、Ito「て部長、明日の仕事も終わってますよ!もしや明日お休みなさるおつもりで…」、O「(カツカツと廊下を去る)」
6時です→O「(買い物中)なにか精のつくものは…」、K「(事務所で後援会関係者と話し合っている。そのあとサイン会、取材陣からの質疑に応じる。ヤリ手の記者が木戸の神経に触るようなことをわざと言って、きりりと尖った木戸の貌をカメラマンが激写。即日完売。)」
7時を過ぎました→K「ただいま…」、O「お帰りなさい」
8時を過ぎました→K「美味しい」、O「肉も食べてください」
9時を過ぎました→O「お背中を流します」、K「え…」、O「(流し始める)…もう少しお肉をつけられたほうが…」、K「…お前こそ…」
10時を過ぎました→K「(アイロンをかけている)」、O「(隣で服をたたんでいる)」
11時を過ぎました→O「私は明日一日中オフですから」、K「……そうか…」

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覆霞レイカ・ぷれぜんつ