Diary & Novels for over 18 y.o. presented by Reica OOGASUMI.
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      最終更新21th Sep.2021→「Balsamic Moon」全面改装
 大阪出身の山崎さんが、その美貌と裏腹の鬼畜さで「妖女」と名高い土方さんと一緒に暮らし始めて数か月目の、春。

 これは、珍しく降雪が続いた日野市も漸く暖かくなって、ぽかぽかの陽気が降り注ぐようになった、とある日曜日の朝の小話です。
 平日よりも一時間遅い午前七時半に起床し、市内をパトロールついでに一時間ジョギングした後、多摩川河川敷での百メートルダッシュ三十本をこなすのが、山崎さんの日課です。

 刑事課国際係の彼の仕事は、外国人犯罪の検挙や逮捕、その予防と対策、及び国際犯罪組織の情報収集と分析ですが、某鬼から駆り出されて刑事課担当の業務全般に関わることが多々あります。だからこのようなトレーニングは欠かせません。

 空手の有段者である彼は鬼が係長を務める強行犯係からも慕われ、同係の主要メンバーである永倉さんや沖田くん、原田さんたちとつるむのが珍しくありません。永倉さんたちは、少し口は悪いですが心は熱い男たちで、山崎さんが日野署に配属されてからずっと仲良くしています。去年まで、生活安全課の鎌足さんも参加して、「お好み焼きパーティ」を開いていました。

 原田さんは三つ子の世話があるので今朝は来ていませんが、永倉さんが犬のパトラッシュを連れて、百メートルダッシュ三十本に付き合ってくれています。パトラッシュは永倉さんが住むマンションの管理人さんの飼い犬ですが、動物好きの永倉さんに懐いているので、日曜日は一緒に行動することが多いです。

「よーい、ドン!」

 百メートル先で永倉さんが旗を振るのが、スタートの合図。さすがサルーキのパトラッシュ、山崎さんをあっという間に引き離して行きます。山崎さんもパトラッシュには敵いませんが、パトラッシュと一緒に走ることで、自分のタイムが速くなっていることに気づいています。

「お、14秒09、やるなー」

 短距離はあまり得意ではなかったのですが、タイムが速くなったのは永倉さんとパトラッシュのお蔭だと思っている山崎さんは、十本走った後で永倉さんと交代し、今度は永倉さんのタイムを計ります。永倉さんはなかなか15秒を切れません。と言うか、日曜の朝の山崎さんが最強なのです。絶好調を自覚して、山崎さんはストイックな顔の裏でにんまり笑っていました。

 午前十時の日曜日、今頃彼の愛しいひとは、まだ布団のなかでしょう。あのひとは生まれつき体が脆弱で、起床時収縮期血圧が90ありません。気力だけで生きている節があります。それでも昨夜は、ちゃう、今朝は未明まで付き合って貰いました。

(せやけど、先に誘うたんは土方さんやし)

 パトラッシュを追いかけるようにしてダッシュを繰り返す永倉さんのタイムを計りながら、山崎さんの脳裏には今朝未明の土方さんの姿が蘇ります。

 学生時代までに八か国語をマスターし、警官になってからそれに二か国語を加えた山崎さんにとって、土曜日は招集が無い限り語学学習の時間です。何故なら、二十四時間で飛び交う生のニュースを中継で複数同時に聞くことが、語学習得に役立つからです。

 大阪人の父親と東京出身標準語の母親の間に生まれた山崎さんには、子供のころから特技がありました。それは、複数の言語を同時に理解して、復唱することで言語を習得することです。常に二つの言葉が耳から入って来る環境に育ったことで、複数の言語を同時に理解しながら使用する習慣が身に付きました。だから小学生の時に通っていた英語塾でも苦労は無かったし、ついでにスペイン語にも手を出した彼は、中学生で既に英語とスペイン語の日常会話が出来るようになっていました。その調子でどんどん言語数を増やしていったのです。

 高校三年生のゴールデンウィークに運命の出会いを果たした彼は、都内の大学に通学しながら、アルバイトや株取引をして貯金もしつつ、願いを叶えました。

 十か国語のなかには勿論フランス語もあったので、山崎さんの凄まじい語学力に目を付けた大学のOBから、将来的にICPOを目指しての警視庁入りを勧められたのですが、初恋の人が所轄にいたので、あっさりとそれを断りました。しかし、警視庁捜査一課にお兄さんがいる山南敬介さんに能力を見込まれて、警視庁との合同捜査の際にはひっぱりだこになっています。お蔭で日野署の評判はとても良いのです。

 それでいて趣味は音楽鑑賞と園芸、と言う山崎さんの実家は関西では有名なゴルフクラブで、山崎さんが警察官になってから、警視庁や警察庁OBがヤマザキゴルフクラブに入り浸るようになって、東京で勤めながらも実はしっかり親孝行をしている彼は、誰にでも優しくて穏やか、仕事にはストイックで、頼りになることで有名です。

 イイとこの坊ちゃんなのに、それを鼻にかけず、頭脳明晰成績優秀性格温厚な彼が、どうしていつまでも結婚しないのかと周囲が首を捻り出した頃、鬼の土方さんが心も体もボロボロになっていました。山崎さんにとっては大事な初恋の人でしたが、優しい山崎さんは愛しいひとの恋路の邪魔をすることはしたくなかったのです。

 山崎さんと異なり、土方さんはここ日野市の出身で、美貌はともかく言葉は悪いし態度は最悪、あらゆる人間を下僕か何かにしか思っていないような節があって、鎌足さんからは鬼や悪魔と呼ばれています。尤も、「仕事の鬼」「被疑者にとっての悪魔」と言う意味合いも含まれているので、土方さんが根っからの悪人と言うわけではないのです。

 その土方さんが、昨夜からパソコンから離れずに外国のニュースをずっと見たり聞いたりしていた山崎さんの自室を訪ねて、「寝るぞ」と言ってきたのです。

 iTuneで洋楽を掛けながら、インターネットでテレビを見ていた山崎さんはひっくり返る程に仰天しました。それまで、彼がそんな台詞を言ってきたことは無かったからです。仰天した山崎さんは、らしくなくガタッと音を立ててパソコンデスクから立ち上がり、速攻で隣にある寝室のダブルベッドに彼を押し倒しました。午前中に干しておいた布団とシーツがふかふかで良かった。

 彼は痩せているのです。出会った頃より七、八キロは減りました。もともと大柄では無かったし、最低限の筋肉を残して肉らしい肉がこそげ落ちた分、美貌が壮絶になりました。それでいて根暗な心を抱えている為、美貌に翳りが加わって、あんたは薔薇のナイト・タイムですか、と詰め寄りたくなるような妖艶な雰囲気。(実際詰め寄ったら「なんだ、てめぇは」と言われて凄まれますけど…)酷い時は二十代の頃よりも十キロ体重が落ちていたのですが、山崎さんが必死に食事を与えて休息を取らせて、最近少し肉が増えてきました。山崎さんの抱き心地の好みもあるからです。

 語学も携帯電話をほっぽりだして、少し肉付きの良くなった彼を、ふかふかのベッドで一晩中抱く。

 とっっても幸せな朝を迎えた山崎さんは、お腹を空かせて起きるであろう土方さんのために軽い朝食は作って来たのですが、低血圧の彼は布団から出るのを嫌がって、キングサイズのベッドのなかで埋もれている可能性が高い。と言うのは言い訳で、実際は腰が辛くて起き上がれないのですが、山崎くんにとっては光栄なので、彼の静かな寝顔をしばらく見つめたのち、ひとり、ジョギングに出たのでした。

 爽やかな空気が気持ちいい。山崎さんは、日曜の朝が大好きです。自分の体のあちこちから、あのひとの香りがするから。

 全盲の為時郎お兄さんが作っている精油でなければ取れない体の痛みを緩和するために、鎮痛用のオイルを体に塗りたくっていますが、それがとても良い香りなのです。為時郎さんの工房では、沢山の種類の花から抽出した精油を、すべて手作業でブレンドしているのだとか。

 刑事課の強行犯係長と言う激務で心身ともに酷使している彼の為に、疲労が酷い時には、山崎さんが彼の背中にオイルを塗ってあげることがあります。オイルプレイが出来るとは、夢にも思っていませんでした。

 再び頬が緩んでニタニタしそうになった山崎さんのadidasのスウェットフードジャケットのポケットが鳴って、山崎さんは現実に帰ります。

 スライド式のガラケーを開けば、題名だけのメールが一通。

『腹減った』

 朝食は作って来た筈なんやけど。

「………」




 かいらしいなぁ




 未明のあれこれを再び思い出してごくりと喉を鳴らした山崎さんは、躊躇いも無くスッと立ち上がりました。

「永倉さん、すみませんが、俺は先に帰ります」

「ああ?!」

 山崎さんの言葉に、ダッシュを十本しか終えていない永倉さんは、パトラッシュとともに驚きました。パトラッシュの耳がぴんと跳ねます。

「後で昼飯食いに行くンじゃねーのかよ?」

 体を動かした後、近くの定食屋「伏見や」で少し早目のランチをするのがお約束です。優しい店主が、パトラッシュ用のランチまで準備してくれています。一人暮らしの永倉さんにとっては、「伏見や」でのワイワイランチが楽しみの一つなのですが、山崎さんの本日の楽しみはランチではないのでした。

「すみません」

「そりゃまぁ、良いけどよ。どっか悪いのか?」

 大丈夫か?と永倉さんが声を掛けようとしたとき、試衛館道場で朝稽古をして来た沖田くんが、胴着のままこちらへ歩いて来ました。

「おっはようございまーす。パトもおはよう!ダッシュ三十本終わりました?僕もやろうかな」

 わふ!

 パトラッシュが沖田くんに飛びついて、沖田くんは河川敷に背中から倒れこみ、ころころ遊び始めます。どちらが犬か分からない。

 そんな二人(二匹?)の姿を見て、もともとは犬好きだった山崎さんの口から、本音がぽろりと出てしまいました。

「かいらしいなぁ」

「あ?」

「あ、動物は、可愛いなと思って」

「おお、パトラッシュは最高の犬だからな」

 パトラッシュはマンション管理人さんの飼い犬ですが、永倉さんにとっては既に家族で、管理人さんの代わりに散歩したり体を洗ったりをいつもしています。

「山崎も、犬が好きなのか?」

 聞かれて、山崎さんは少しだけ言葉に詰まりました。あのひとは、どうみても犬系ではないから。だから、こう言いました。

「犬も好きですけど、最近は、猫も好きなんです俺」

 顔は最高、躯も最高、口は悪いが夜は天国。

 それが、山崎さんの家に棲みついた態度のでかい猫の正体です。

 あかん、涎が出てしまう。

「へ〜、山崎さん、猫飼ってるんだぁ」

 どこから現れたのか、聞き耳を立てていたらしい鎌足さんが、ぬっと顔を出しました。今日の彼は、全身がゴスロリで出来ています。ウサギの耳を付け、ピンと跳ねた黒い髪の毛とフリルのスカートが揺れて、可愛いのだか気色悪いのだか良く分かりませんが、これがオフの彼のスタイルです。

「ねぇパトラッシュ、山崎さん家(ち)の猫って、どんな猫かしらねぇ?」

 沖田くんから鎌足さんに奪われて撫でられまくっているパトラッシュは、「くぅ〜ん」と答えるしかありません。賢いパトラッシュは山崎さん家の猫が誰なのかを知っているのですが、大好きな永倉さんの期待を壊したくないのです。

「ん? 鎌足は、山崎さん家の猫、見た事無ぇのか?」

「ある、ような、無いような、かしら」

「なんだ、それ?」

「遠くからしか見た事無いんだもの、あたし。山崎さん家って、四階て言っても大きなマンションの、最上階でしょ。ベランダも広いから、リビングや寝室までは、あたしの望遠鏡で覗けないのよ」

「……の、覗いてはったんですか……」

 山崎さんがちょっと蒼褪めると、鎌足さんは、うふふ♪と笑います。

「山崎さんて、ほんと真面目よね。晴れた日は必ず布団をベランダで干して、それから園芸してるのよ。あそこまで愛されて花も布団も例の猫も幸せでしょ」

(だと、ええんやけど)

 基本的に、山崎さん家の猫は不愛想です。近藤署長が言うには、小学校の低学年の頃は良く笑ったそうですが、成長するに連れて顔が良すぎて周囲からジロジロ見られるようになってから笑顔が消え、不愛想で、両目で相手を刺す様な表情(かお)になったのだそうです。確かに、幼いころの土方さんは女の子のようでした。あまりにも可愛かったので、土方さんのすぐ上のお姉さん・蘭さんにお願いして、子供の頃の彼の写真を譲って貰い、警察手帳に挟んであったりします。勿論これは、あの猫には永遠に秘密です。説明が長くなりましたが、職場はおろか自宅でも表情が豊かとは言えない猫は、感情がころころ変わるタイプでは無いのでしょう。松本良順先生曰く、「先天性慢性情緒低迷症候群」だそうです。

 そんな猫なので、仕事の無い日は家事を終えた後ぼーっとしているか、何となく本や雑誌を読むか、体調の良い日は剣道をしに道場へ行くか、と言う、変哲もない時間を送り、山崎さんのように休日だからこそ気合を入れて学習して、疲れているわけではありません。

 だから、体力があります。その体で彼は山崎さんを「さぁ寝るぞ」と誘ったのです(「ちげーよ!!山崎が俺を(がみがみ)!!」)。

 素晴らしい夜でした。

 お蔭で今日のダッシュは14秒を切ることは出来ませんでしたが、心は晴れ晴れしています。おまけに、「腹減った=早く帰って来い」メールが届いて、普段メールを使うことが無い彼からの一通が貴重だからこそ、彼の想いの通り、早く帰りたいと思います。彼のワガママに、応えたい。ベッドのなかでもワガママを言って来はって、かいらしいねんホンマ。

 まだ布団に包まっているであろう愛しいひとの顔を想像して、山崎さんは良い気分で、利口な犬が好きらしい永倉さんに返事をしました。

「手のかかる猫も良いですよ。人見知りは激しいですが、本当は可愛いし。ご飯も、俺が作ったものじゃなければ食べたがらないので、休日はほぼ一緒にいます」

「ずいぶんな猫だなぁ。そんなのと四六時中いて、心休まるのか?」

「大抵、ソファかベッドで横になっているので、それを眺めるのも良いんですよ。目の保養になります」

「保養っつーことは何か? 美猫なのか?」

「…美猫と言えば、美猫に入るんでしょうね、あれは」

 大人しく山崎さんと永倉さんの会話を聞いていた沖田くんも、混ざって来ました。

「…ちょっと待て。沖田もその猫を見た事あンのか?!」

「ん〜、山崎さん家の猫は、マニアの中では有名なんですよねー、山崎さん」

 沖田くんの目が意地悪く光ります。

「良くあんな(酷い)のと同居出来るなって、一部じゃ物凄い有名になってますよ」

「沖田ぁ、一部ってどこだよ」

「ひみつですよー。ね〜パトラッシュ〜」

「わんわん」

「なんだよ、パトまで俺をのけ者にして……意地汚(きたね)ぇぞ、お前ら」

「いやいや、山崎さん家の猫には敵わないと思うわよ、あたし」

 意地汚さっつったらさぁ、あの猫の右に出るものは居ないわ、絶対!

 鎌足さんは両手を腰に当てながら、「ねぇ山崎さん」と目をカマボコにして笑います。

「あの声で泣かれたら、確かに堪らないわよねぇ。あたしの趣味ね、天体観測なの。今の時期は明けの金星が綺麗でさ、つい早起きして見ちゃうのよね。で、たまたまあの猫が出て来たのを見つけちゃったのよ。目立つでしょ、あれ」

「目立つ、でしょうか?」

「目立ちまくりよ、色が白いから余計」

「ほぉ、山崎の猫は白猫なのか」

「白猫と言えば、白猫ですよねー、そんな可愛く感じないけど僕は。寧ろ、にくったらしい」

「…(沖田くんの一言を聞かなかったことにして)…たぶん、外の空気が吸いたくなったのだと思います」

 最近、ほぼ禁煙状態になった彼は、淀んでいない外の空気を肺いっぱいに吸い込むのが好きになっていました。だから、夜明けや夜にベランダに行ってフェンスに凭れかかり、しばらく過ごす時があります。市井に顔を見られないように、リビング側に顔を向けてはいますが、目ざとい鎌足さんには、それが誰なのかすぐに分かったのでしょう。

「猫もそんなことあるのか。知らンかった」

 永倉さんが感心したように言いました。

「妙に人間的な猫なんだな」

 隣で沖田くんが、ぶふっと噴き出しています。

「そんなだから、きっと山崎さんには可愛くて堪らない猫なんでしょ」

「……でもよ鎌足。お前さっき、『あの声で鳴かれたら』とか何とか言ってたよな。猫の声はだいたい似たようなモンだと思うが、特徴的な鳴き声なのか、山崎の猫って」

「あ、いいいいいやその、……、夜泣きです」

「猫にも夜泣きってあるのか、知らんかった。そうかー、まだ子猫なのか。それじゃぁ、手もかかるし、ずっと一緒に居なきゃだよな」

 原田も三つ子の夜泣きが凄いって、毎日目の下の隈が消えないしなぁ。

「ん〜、山崎さん家の猫は、夜泣きだけじゃなくて、いつもと全然違う鳴き声も上げるんでしょうね。僕も昔、猫飼ってたから分かりますよ。結構大声ですし、あれ」

「おいおい、子猫なのに、もう発情期なのか?だったら山崎も寝不足なんじゃねぇ?その割になんかお前、この頃顔色良いし、元気良いよな。タイムも良いしよ」

 永倉さんは、よいひとなのです。

 鎌足さんがしゃがんで、河川敷の土をバンバン叩きながら爆笑を堪えています。ゴスロリの恰好で土をバンバン叩いて良いものでしょうか。

「えっ……と、あー、俺も一緒に寝ていますから、大丈夫です」

 鎌足さんが堪え切れず、大声を出し始めました。

「アーハッハッハ!!可笑しすぎ!……ていうか山崎さん、あなた一度、」

「?」

「病院に行ったほうが良いわ」

 コスプレオカマ男にだけは言われとうないねん。



 

 沖田くんとパトラッシュは向こうでフリスビーをし始めました。永倉さんと鎌足さんは温かくなってきた土に寝転がって青い空をゆく飛行機雲を見ながら、お喋りに花を咲かせています。

 日光が多摩川に反射して、きらきら光る日曜日。

 菜の花が咲き乱れ、紋白蝶が飛び、沢山の家族連れが魚を釣ったりキャッチボールをしたりしています。

 その頃、山崎さんのランニングジャケットの襟元に隠していた盗聴器でことのすべてを聞いていた土方さんが、こめかみに青筋を立てて拳をぶるぶる震わせているとも知らずに、山崎さんは走ります。愛しいひとの待つマンションを目指して、パトラッシュ超えかも知れない猛ダッシュが素晴らしい。

 走れ山崎! 頑張れ山崎! 玄関のドアを開けたら、きっと君はどつかれる!

 と言うわけで、日野市は今日も(たぶん)平和です。






≪あとがき≫

 BGM "Final Countdown/DAVE RODGERS"

 「風のなかのライラ(おまけ)」はコメディです。

 いやー、面白いわ、こいつら。

 朝起きるたびにストーリーが一話ずつ出て来て、ちょっと困っている覆霞です。小説を書く時間が出来たと思ったら、今度は打ち込むスピードが文章作成時間に追いつかなくなってしまった。

 山崎の大阪弁は、覆霞の職場の取引先の社長夫妻が使う、いまは廃れた大阪弁の設定です。現代の一般的なものではないみたいで、そこのご家族以外の人からは聞いたことがありません。でも大阪に住んだことも無いので詳細が分からない……下手くそで申し訳ないです。あの言葉を聞いて、非常に感動し、そこから山崎丞像が生まれました。
autor 覆霞レイカ2014.03.10 Monday[03:35]
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